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立命館大学、滋賀県工業技術総合センター、近江窯業の共同研究による外壁冷却タイルの研究開発は、平成20~21年度 経済産業省 近畿経済産業局 地域イノベーション創出研究開発事業として認定されました。滋賀県(信楽)地域の伝統産業である焼き物の技術と、これまでに培った信楽焼タイルの製造技術を生かして、現在問題となっている“地球温暖化”や“ヒートアイランド現象”に有効な機能を有し、かつ幅広い建築物に採用可能な外壁冷却タイルの開発を行いました。
釉薬による特殊な表面構造と中空構造を持つ外壁冷却タイルを作成し、その外壁冷却効果・ツタ植物の登はん性・吸音性能の研究と定量値的な性能評価を行いました。
・研究開発事業の実施スキーム

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この事業の目的は、釉薬による特殊な表面構造と中空構造を持つ外壁冷却タイルの生産方法を確立すること、そしてそのタイルの外壁冷却効果・ツタ植物の登はん性・吸音性能を研究し定量値的な性能評価を行うことです。
性能評価の目標としては、外壁への打水により室内侵入熱量を1/3低減すること、また、年間消費電力を30%低減することとしました。二酸化炭素排出量を削減できる建材として、エコ商品の認定を目指しています。また、CASBEE評価やPAL値による評価にも対応できるよう、研究を進めてきました。将来的には、BEMS(ビルディングエネルギーマネジメントシステム)やHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)と連携したハイブリッドな環境対応建材として、都市環境の改善に貢献していきたいと考えています。
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この事業のため、鉄骨造の建造物を想定した試験棟や、ツタ植物登はん試験壁を設置しました。また、試験施工として、イオンモール草津様にもご採用いただきました。

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外壁冷却タイルは、釉薬による特殊な表面構造と、中空構造を持つ外装タイルです。タイル表面に施された釉薬は、毛細管現象によって水を拡散させます。また、表面の細かい凹凸が、ツタの定着を促進します。タイルが中空構造であることから、空気層による遮熱性能が得られます(特許番号第3858216号)。また、中空構造の空気層による吸音機能を付加するためには、タイル表面に穴をあけたタイプの試作タイルを製作しました。 |
特殊釉薬によって、タイル表面に水が拡散され、タイル全面ひいては壁全体を冷やすことができるようになります。タイルの断面を光学顕微鏡及び電子顕微鏡で観察した様子が右の写真です。特殊釉薬は毛細管現象により水を拡散させますが、タイルの素地は磁器質で吸水率が低く、保水しません。 |
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水の拡散性能を評価するために、水平に置いたタイルの表面に水滴を落とし、水の広がりを測定すると、下左のグラフに示すように15秒後には27mm広がりました。この性能によって、壁に垂直に設置したタイルに上から灌水を行うだけで、下右の写真のように水が拡散されて壁全体を冷やすことができます。
・水平に置いたタイルでの水の拡散![]() |
・壁面での水の拡散![]() |
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タイルの中空構造は、タイル表面の熱がタイルの裏側・建物躯体側に伝わるのを妨げます。その遮熱効果を検証するために、コンピュータによる流体解析(CFD)やタイルを使った測定を行いました。 |
・CFDによる解析結果![]() |
・実際のタイルによる測定の様子![]() |
・実際のタイルによる測定の結果![]() |
・熱伝導率の算定結果![]() |
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タイルにツタを育てたり、灌水を行ったりするために、施工法は乾式工法(右の図に示すCSレール工法)で、を採用しました。乾式工法では、躯体とタイルの間に下地材(CSレール工法ではアルミ下地レール)があるため、ツタの根や水が躯体に侵入することを防ぐことができるからです。 |
・CSレール工法 模式図![]() |
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試験棟に外壁冷却タイルを施工し、外壁冷却タイル表面に打水すると、毛細管現象による水の拡散機能で壁面全体に広がり、日射を受けて高温になった壁を冷やすことができます。また壁の外側を冷やすことで、建物内部へ伝わる熱も少なくなります。
晴れた日に建物南面を撮影すると、日射により48.1℃と熱くなった南向きの壁が、打水をすることで水が全面に広がり、10分後には表面の温度は35.9℃まで下がりました。
・打水による壁の冷却効果
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この試験では、灌水には水道水を使用しましたが、水道水も資源であることから、雨水の利用についても検討を行いました。下写真に示すような雨水利用システムを試験壁に設置し、運用試験を行いました。
その結果、4月から10月の期間において、ツタ植物登はん性能試験壁で使用した灌水のうち56.6%を雨水でまかなうことができました。容量200リットルの貯水タンクを2台設置しており、タンクを増設することで、雨水の利用率を上げることが可能です。また、雨水を使用しても灌水システムに問題のないことを確認しました。
・開発試験を行った雨水利用システム
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タイル表面に打水することで、建物内部へ伝わる熱も少なくなります。下の図に示すように、室内気温の上昇幅は18.0℃から9.0℃に、50%低下しました。このことから、目標とした打水による室内侵入熱量1/3低減を達成できました。

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ツタ植物は日当りの良すぎる壁に対しては、壁の表面が高温になるため、定着が困難なことがあります。外壁冷却タイルならば打水で壁面全体を冷やすことができるので、表面の最高温度が73℃に達するような南向き・西向きの壁であってもツタ植物が定着しやすくなります。これまでのツタ植物による壁面緑化よりも早く緑化が完了します。しかも植物が全面に広がるまでの間、タイルからの水の蒸散による冷却効果で緑化の効果を補うことができます。
下の写真は、植栽から4ヵ月後の南面の様子です。外壁冷却タイルを施工した壁では、ツタ植物が壁面をほとんど(93%)覆いつくしています。一方、従来のタイルを施工した壁では、ツタ植物の枝が壁に定着できずに垂れ下がってしまいました。

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ツタ植物が育ち、壁を覆うようになれば、打水をしなくても冷却効果が得られます。ツタ植物の葉が日陰を作ることで壁面の温度上昇が低減されるからです。晴れた日に建物西面を撮影した、熱画像計測装置による熱画像を以下に示します。ツタ植物のない通常タイル施工の西向きの壁は、タイル表面温度が73.1℃と高温になりました。同じ西向きの壁でも、ツタ植物があるとタイル表面温度は39.3℃で、33.8℃もの温度上昇が抑えられました。
また、室内壁の表面温度はツタ植物のない壁では39.6℃であったのに対し、ツタ植物があると28.4℃となり、11.2℃も低くなりました。このように壁からの熱の侵入を抑えることで、室内の気温も、ツタ植物のない場合は38.0℃となったのに対し、ツタ植物があると28.4℃となりました。


外壁を冷やすことで室内気温が下がると、冷房に必要な電力を削減することができます。
冷房の設定温度を28℃として24時間エアコンを稼動させ、測定した電気使用量を、通常工法で通常タイルを施工した条件=100%として集計した結果を示したものです。電気使用量は、外壁冷却タイルを施工することで35%、外壁冷却タイルに打水をすることで43%、外壁冷却タイルにツタ植物を育てることで55%を削減することができました。更に、ツタ植物を育てた状態に少しだけ打水をすることで、74%を削減することができました。

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冷房に必要な電力を削減することで、二酸化炭素(CO2)排出量も削減することができます。
環境省の算定基準:電力1kWhあたり0.39kg CO2に基づいて、電気使用量削減によるCO2排出量削減(カーボンオフセット)効果を算定したものです。
カーボンオフセットは外壁冷却タイルを施工することで35%、外壁冷却タイルに打水をすることで43%、外壁冷却タイルにツタ植物を育てることで55%とすることができました。また、外壁冷却タイルにツタ植物を育てた状態に少しだけ打水をすることで、74%とすることができました。
但し、今回の実験では灌水に水道水を使用しているので、打水ありとツタ+打水ありの条件ではCO2を排出してしまいます。環境省の算定基準:水道水1リットルあたり0.38kg CO2に基づいて、灌水による排出量も含めて算定すると、カーボンオフセットは打水ありの条件では39%、ツタ+打水ありの条件では71%となりました。

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壁の温度と、人の感じる快適さの間には大きな関係があります。今回の研究開発事業で設置した試験棟でも、通常のタイルを施工した試験棟の中がサウナのような暑さとなった真夏でも、中空タイル+ツタの試験棟に入ると地下室のような涼しさを感じることができました。
これは、室内の壁の表面温度が低いことで、室内の気温と室内壁の放射温度に左右される『体感温度(作用温度)』が大きく変わるためです。『体感温度』は、次のような式で求められます。
このことから、冷房によって部屋の温度を下げても、壁の温度が高いと快適ではないことがわかります。例えば、通常のタイルを施工した場合には、室内壁の温度が41.4℃と高いため、冷房設定温度が28℃でも、体感温度は35.4℃となります。一方、下の模式図に示すように、中空タイルにツタを育てた場合には、室内壁の温度が29.7℃であるため、体感温度は28.9℃で快適に感じられるのです。

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以上のように、外壁冷却タイルの性能評価を行い、外壁への打ち水による室内侵入熱量を50%低減しました。冷房による消費電力を打水によって43%、ツタ植物+打水によっては74%低減するなど、目標を達成しました。また、吸音タイルを試作し吸音性能の特性を測定しました。
近江窯業は、これまでに蓄積したタイル製造技術を活かして、地球温暖化対策や都市環境改善に貢献しうる商品の開発に取り組んできました。この外壁冷却タイルを事業化することによって、地球温暖化対策に貢献していきたいと考えています。
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